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大森 Bellami HD-1は、チノンのオリジナルカメラとしては、どれくらいぶりになりますか。

茅野約20年ぶりですね。

大森だったら、もうめちゃめちゃ久しぶりに出たって事ですね。
白20年ぶりにミュージシャンが歌を出したみたいなことですよ。
白これはもういわゆる復活みたいな話しで、チノン復活!って言われちゃいますね。

茅野そういう風に捉える方もいらっしゃると思います。

大森20年ぶりというと凄いですね。

茅野その後生まれている人達が沢山いますね。

大森20年ぶりの新商品。

茅野ですからその間、なんとか持ちこたえてきたというか、
白他のカメラではない商品も含めて色々な形で何とか名前を維持出来たというのは
白良かったなと思っています。


大森カメラを作らなくなったところが20年ぶりにカメラを出したって、
白あんまり聞いたことがないですよね。

茅野そうですね。ほとんどないかもしれないですね。大きな会社だとそれは難しいかもしれません。
白逆に小さなところでは小さいが故のお金の心配とか色々違う難しさはありますが、
白ずっと実現出来なかったことを現実にするというチャンスはあると思います。ある意味で
白執念深いのか、ずっと気持ちを持ったままで、ここまでよく来たなというのはあります。


大森ということは、いつかカメラを出したいなというのはずっとあったわけですよね。

茅野それはもうずっと、20年前からずっとです。
大森かつてチノンは様々なカメラを出してきましたが、今回のBellami HD-1みたいな、
白ああいうユニークな振れ方っていうのはチノンの歴史の中ではあったのですか。

茅野あったと思います。

大森それは例えば、思い起こすものってなんでしょうか。

茅野そうですね、ずっと昔であればやはりチノンダイレクトサウンド(8ミリシネカメラ)です。
白私の時代としてすぐに思い浮かぶのはオートフォーカスの35ミリフィルムカメラです。
白非常にごつくて、見た目のデザインが凄く良いというものではなかったのですが、
白オートフォーカスの技術というのは優れていました。つまり、他の要素には目をつぶって、
白技術を優先して出したカメラでした。


大森それは各社のオートフォーカスより優れていたってことでしょうか。

茅野そうです。色んなオートフォーカスがあり、それぞれが違う技術でパテントを持っている中で、
白自分たちは他と違う独自のユニークな道を選んだってところがあります。


大森自分たちのオートフォーカスを作る事にこだわった。

茅野そうですね。もう1つ、ユニークなカメラとして思いつくのは、ジェネシスという35ミリ
白フィルムカメラです。これは一眼でありながらレンズ交換ができないカメラで、当時
白ブリッジカメラとも呼ばれた物でした。


大森一眼なのにレンズ交換ができない。(笑)

茅野そうです。レンズ交換できて初めて一眼だという常識を覆して、いやそうじゃなくて
白一体型で一眼というのもあり得るじゃないかという考えで作られたものです。


大森それは何か利点があったわけですか。

茅野使いやすいという事、安価に提供できるという事です。実際に一眼レフを持っている人で、
白レンズを沢山揃えて交換して撮る人達というのは少数で、多くの人は一眼レフで撮れるような
白きれいな絵を欲しがっているのでは、と考えました、言ってみれば今のミラーレスの存在と
白似たようなポジションでした。


大森ミラーレスとか高級コンパクトの思想の先駆けだったわけですね。

茅野はい。その二つというのはチノンの歴史の中でも特筆する事だと思います。他に思いつくのは、
白Bellamiというカメラです。これは今回のBellami HD-1の名前の元になったものですが、
白観音開きでレンズを出す事によって光路長を確保するという非常にユニークなもので、
白これはまさしく好みが分かれたカメラでした。海外向けには表面に馬車の彫り物があったりして、
白独特のデザインと性能の良さの得意なバランスを好きな人は大好きだけど、嫌いな人は大嫌いという、 白評価が真っ二つに分かれたカメラでした。しかし、ある程度時間が経った今では、
白日本のカメラ史のなかでユニークな存在だったということで評価をいただいています。
白その他1995年頃発売された旧チノン時代最後のチノンブランドデジタルカメラ
白ES-1000も懐かしい製品です。


大森当時のチノンは、何か変わったものをつくらないといけないという社風があったわけですか。

茅野そうですね。企業文化的に、ユニークなものは売れないから駄目だ、というような形で潰してしまう
白ということがありませんでした。ユニークなものは社風にあってるんじゃないかということで、
白ある程度まで進めて市場に出してみようというころまで経営陣含めて考えていたと思います。


大森ユニークなものを出そうというスピリッツが、大手メーカーを含めて当時のカメラメーカーが
白持っていた時代ということですかね。よく考えたら、嘗ては大手もユニークなものが多々ありました。 白皆がユニークさを競っているというところがあった。

茅野そうですね。技術的に成熟するとユニークなものが出にくい時代になります。
白今のデジカメの市場というのはそこまでまた来てしまっていて、 何か新しいブレイクスルーが
白ない限りは、これ以上伸びる事は出来ないという閉塞感があります。 それ故に、スマートフォンの
白カメラに人が逃げていった、というと語弊があるんですけど、 移っていったというのは、
白そこにあまり差がなくなってきたから、という事だと思います。


大森Bellamiの昔のやつは彫り物があって観音開きでレンズが出てくる。 それは普通に考えたら
白かなり変わっているし、遊びの要素が過分に入っている。 そういう意味では名前を受け継いでいる
白だけあって、今回のBellami HD-1もその匂いがしますね。 しかしリリースされる状況は、
白かつてのカメラ業界が活き活きしていた時代ではなく、閉塞感漂う時代です。

茅野そうですね。今は非常にデジタルカメラ自体が苦しい時代ですが、却ってそういう時の方が
白こういうものを出すチャンスかもしれないと思っています。
白標準的なものがドンドン売れる時代ではなく、 大手も次々と新しい物を出すことができない
白タイミングだからこそ、こういうものを出す。 そこが面白いと思っています。


茅野もともと、チノンは、大手カメラ会社とは違う、ユニークなものを出すことで
白存在を示してきた会社ですので、その歴史を繋いでいきたいという思いもありました。
白一方で現実的には小さい会社ですので、いわゆる優等生的なカメラを作り、 大手とまともに市場で
白ぶつかり合うと我々は勝てないので、勝てないというところをまず認識して、 じゃあ、
白勝てなくても市場に於いて存在感を示す方法はあるのか、と考えた時に、 やはり大手がやらない
白スポットというかエリアがまだあるのではないかと、 そこに入れば別に大手とまともに
白ぶつかり合う必要はないと考えました。


大森まともにやっていたのでは自由もないし勝利もないみたいになってしまう。
白けれど、勝利は約束されていないにしても、今度のカメラには自由はあるぞ、ということですよね。
大森ユニークなものを作る難しさは、色々な人が賛同してくれるものは結局ユニークとは言えないので、
白ユニークなものっていうのは、大体が何そんなものって言われるものがほとんどです。
白で、それが成功すると、あれユニークだったね、となるのですが、 ほとんどのユニークなものっていう
白のは成功しない運命にあります。 だからユニークなものを作り出していくってことは、
白常に孤独な作業ということですよね。

茅野その通りで、これは昔から私自身の考え方なんですけれども、 新しい事とか革新的な事をしようと
白思った時に、人数をかけて時間をかけてデータを揃えて検討すれば新しいものでなくなってしまうと
白思っているので、できるだけ短い時間で人数を絞って決める、 ということが大事だと思っています。

白優秀な人達が沢山のデータを持って集まって何度も練っていくとどんどん優等生的な形に収まっていく。
白万人に受け入れられるものをマーケティングの知恵を出し合って検討したものっていうのは
白正解そのものだと思うのですが、それではユニークなものは生まれません。
白やはり独断的に、特定の人間が言ってみれば少し暴力的に、というといけないのですが、
白独自の考え方で押切るような強引さで決定するようなものでないと、新しいものではないと思います。
白が、一方では批判も受けやすいですし、外れるとひどい事になってしまいます。


大森そうですね。そして大体外れますよね。

茅野そうですね。私も最初に企画段階で皆がそれはいいよって言ったものは、ああこれは駄目だなって考えます。

大森誰に聞いても皆が欲しいというようなものは、つまらないですね。
白誰か自動車の偉い人が言っていましたが、 自動車が生まれる前に、人々にマーケティング
白調査をしても、もっと速い馬が欲しいというと。 だから車は生まれないっていう。

白ユニークなものって、言い出しっぺがいて、そのユニークなものに対して皆がものすごく情熱を
白持って、それでユニークなものは作られていくっていう、そういうイメージがあると思うのですが、
白大概の場合はユニークなものを作ろうと思った人っていうのは大体1人とかそんなもので、
白周りの人はそんなものには無関心で、成功しそうになったり、ウケたりした時になって、
白やっと注目するっていう流れじゃないですか。だから非常に孤独なことですよね。

茅野そうですね。計算してしまうと成り立たないですし、
白まずいなという気持ちが出てきてしまいますから、そこは計算無しで。


大森計算してたらできないですよね。(笑)

茅野はい。できないです。(笑)

大森勝算なんてないですからね。勝算があるものは既に大手がやってるし、目の前には食えそうなものが
白 全部抜かれた畑だけがあって、その畑からどうするのかってことですよね。

茅野そんなものは食べられないだろうというものを焼いてみたら、
白今まで煮た事がないものを煮てみたらどうだろう、ということですね。


大森 今回のカメラは、絶対にチノンブランドから出したいという強い拘りが感じられたのですが。

茅野なかなか難しいところになるんですけれども、チノンというブランド自体がその創業者の茅野弘の
白茅野という名字から来ているというのもあって、私自身も通常で考える以上にこのブランドと
白いうものに対してのこだわりっていうのがあるかもしれないですね。
白今迄20年以上そういう思いを持ってきたという、ギブアップしないでなんとかここまで来たというのは
白そうゆう特別な理由があったというのもあると思います。
白中堅企業から現在は非常に小さな会社になってしまい、ある時点ではっと気がついたのですが、
白このブランドを維持しようとここまで考える人間って、
白きっと自分以外にいないなと、 こんな馬鹿は自分しかいないのかなと。
大森 小さな会社の商品開発というのは、最後は常に一か八かの博打になってしまいがちですよね。
白でも、ちょっと違うのが、大手のやらない商品を作るってノリになると、早い話し競馬で
白勝ちそうな馬には賭けられないってことになっちゃうんですよね。
白だから勝ちそうな馬に賭けられない条件で競馬をやるわけだから、そうすると大体は外れるっていうかね。 白最初から大体は外れる運命にあることをやっているって事になりますよね。

茅野ただ一方で良い部分は、ギャンブルと何が違うというと、賭けた時点で半分は達成されていることです。
白何かの夢とか思いを持っていますので、賭ける事でその結果が出てきて云々というところは
白確かに博打的な要素はあるんですが、実は賭けた時点で夢を追うという点では到達したとも言えるので、
白半分は出来ている。


大森それは楽観的ですね。でも、そういう気持ちじゃないと、こんなカメラは作れませんね。(笑)

茅野そうですね。元はきっと取れないだろうと思いつつも、 そこで一瞬皆が「おっ」と思ってくれたら
白それでいい、という部分がありますね。(笑)
大森一番苦労した部分っていうのはどの点ですか。

茅野正直なところ一番はお金ですね。それは間違いないです。お金の事を考えると、色々な機能とか性能、
白形もそうですけれども、皆が良いというものではないものを作っているだけに、機能にしても形にしても、
白一つ一つこれでいいのかという疑問が常に湧いてきて、本当にこのまま行っていいのかということを、
白フェイズ毎にその都度考えなければ前に進めない。それが精神的に辛い部分ではあります。

白技術的には、幸いな事に開発設計した技術チームが経験も力もありますので、なんとか頑張って仕上げて
白くれたのですが、ただその中でお金に関わる事で使えるデバイスなどに制限が出てくると、それに合わせて
白設計を変えなければならない事などのジレンマ。後はどんなカメラでもそうですが、最終的に
白商品になるまでは、日々クリアーしていかなければならない様々な問題が出てきます。
大森20年ぶりに作りたいカメラを作った達成感はどうですか。

茅野それはかなりあります。

大森不安も大ありだと思うのですが。

茅野正直不安がないと言うと変なのですが、最初から90%の人が凄いね、良いねって言ってくれるという
白期待を持っていませんので、そういう意味ではどういう結果になっても受け止めて、 また受け入れる
白腹のくくりはできています。酷評されてもそういうことだったのかと思えるし、 結果としては当然
白良い方がいいんですが、それは自分達の身勝手なというか、 自分達の想いで作っているものですから、
白それが人々に受け入れられるかどうかは、 また別の事だと思っています。


大森わからないですよね。(笑)

茅野わからないです。(笑)

大森受け入れられると、正しかったってことになるんですけれどね。

茅野評価というのは他の人がするものなので、評価は評価として受け入れたいと思っていますし、
白楽しみでもあります。ただ痛快という言葉があたるかどうかは分かりませんが、 このカメラを出すことで、
白非常に痛快な気持ちです。 技術的には、他社もこのカメラを作ることはできるでしょうが、しかし出来る
白ということと 実際にやるということは違います。そこの違いがもっとも大きなことかもしれません。


大森商品を作ることって、音楽とか絵とか色々ありますけれど、やっぱり表現活動の1つですよね。
白歌は歌ってないけれど、それは歌だっていうことにもなりますもんね。 商品を作るってことは、
白どこかエンターテイメントをしているということに近いですよね。

茅野野球で言えば、出てきて凄いスウィングをしてホームラン打って喝采をあびるのが 一番良い事ですけど、
白私としては凄いスウィングをして大三振をして、 でもあいつ何も打てなかったけれど凄い空振りだったなって
白言ってもらえるなら、 それはそれでいいなあと。中途半端にバットに当ててポテンヒットっていうよりは、
白目一杯振って音まで聞こえたけど擦りもしなくて、 あいつの三振は見たことの無いくらい
白凄い三振だったなって笑われても、 それはそっちの方が面白いような気がしています。(笑)

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